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EIGRP

基本概念

EIGRP (Enhanced Interior Gateway Routing Protocol) はCisco系で広く使われる先進距離ベクター型(ハイブリッド型)のIGP (Interior Gateway Protocol)。 DUAL (Diffusing Update Algorithm) でループフリーに収束する。

項目内容
種別先進距離ベクター型 IGP
メトリック帯域幅 + 遅延(デフォルト)
収束DUALで高速収束
管理距離 (AD)Internal 90 / External 170

DUAL と経路用語

用語意味
Successor採用中の最良経路
Feasible Successor即時切替可能なバックアップ経路
Feasible Distance (FD)宛先までの自ルータ視点の最良距離
Advertised Distance (AD, RDとも呼ぶ)隣接ルータが広告する距離
判定条件
Feasible Successor成立条件隣接の AD < 自ルータのFD
収束の挙動FSがあれば即切替、なければQuery/Replyで再計算

RD < FD がループ回避になる理由

ポイント意味
RD隣接ルータ視点での宛先までの距離
FD自ルータ視点での現在の最良距離
RD < FD隣接の方が宛先に近い側にいると判断できる
判定解釈
RD < FD を満たす隣接が自分へ戻してくる経路ではないと判断しやすく、FS候補にできる
RD >= FD になる隣接が自分側へ戻す可能性を排除できないため、FSにしない

重要: FS条件は「効率の良し悪し」より、即時切替してもループしない経路だけを残すための安全条件。

重要: EIGRPのAD(管理距離)と、DUAL内で使うAD(Advertised Distance)は意味が別。

用語補足(混同しやすいポイント)

用語ざっくり意味
feasible実行可能な / 成立する
Feasible Successor条件を満たしており、すぐ使える予備経路
Reported Distance (RD)隣接ルータが「自分から宛先までの距離」として報告する値
Advertised Distance (AD) in EIGRPRDと同義として扱う(文献で呼び方が分かれる)
AD の意味文脈
Administrative Distanceルーティングプロトコル間の優先度(例: OSPF 110)
Advertised DistanceEIGRP DUAL内部で使う広告距離(= RD)

重要: 問題文に AD が出たら、まず「管理距離」か「EIGRP内部の広告距離」かを文脈で切り分ける。

等コスト / 不等コストロードバランシング(EIGRP)

項目内容
等コスト時同一最小メトリック経路が複数あれば複数Successorになれる(maximum-paths 上限内)
FSの通常動作FSはトポロジテーブル側の待機経路で、通常はRIBに載らない
variance未設定実質 variance 1(等コストのみ利用)
variance設定時不等コスト経路も利用対象に拡張できる
不等コスト利用の条件判定
1Feasible Condition: RD < FD(successor)
2Variance Condition: 候補metric <= variance × FD(successor)
設定目的コンフィグモードコマンド
不等コスト利用を有効化Router configvariance <multiplier>
同時利用本数を制御Router configmaximum-paths <number>
確認コマンド見るポイント
show ip eigrp topologySuccessor/FS候補、FD/RD、条件成立状況
show ip route eigrp実際にRIBへ載った経路本数

重要: EIGRPで不等コストとして実際に使われる追加経路は、FS条件とvariance条件の両方を満たす必要がある。

EIGRP パケット種別

種別目的送信形式の目安典型シーン
Hello隣接関係の確立/維持multicast(224.0.0.10)ネイバー維持
Update経路情報通知初期は multicast、再送は unicast新規隣接、経路変化通知
Query代替経路探索通常 multicast(必要に応じてunicast)FSなしで Successor ダウン時
ReplyQuery応答unicastQuery受信後の応答
ACK信頼送信パケットの確認応答unicastUpdate/Query/Reply の受領確認
試験ポイント内容
FSなしで Successor がダウンQueryReply を使って再計算する
Active / Passiveパケット種別ではなく、DUALの状態を表す用語
確認コマンド見るポイント
show ip eigrp trafficHello/Update/Query/Reply/Ack の送受信カウンタ
show ip eigrp topologyActive/Passive状態、再計算有無

EIGRP マルチキャストアドレス

項目アドレス
IPv4 EIGRP multicast224.0.0.10
IPv6 EIGRP multicastFF02::A
確認コマンド見るポイント
show ip eigrp interfaces detailIFごとの送受信状態
show ipv6 eigrp interfaces detailIPv6 EIGRP のIF状態

Hello / Hold タイマー(試験向け)

リンク帯域の目安Hello間隔(既定)Hold時間(既定)
広帯域(1.544Mbps超)5秒15秒
狭帯域(1.544Mbps以下)60秒180秒
覚えるポイント内容
暗記優先度高い(選択肢でよく問われる)
最低限の覚え方「広帯域 5秒 / 狭帯域 60秒」
補足実運用ではIF種別やプラットフォームで既定差異があるため、最終確認はshowコマンドで行う

K値(メトリック係数)

K値要素デフォルト
K1Bandwidth(帯域幅)1
K2Load(負荷)0
K3Delay(遅延)1
K4Reliability(信頼性)0
K5Reliability(信頼性)0
項目試験向けポイント
デフォルト計算実質 Bandwidth + Delay が使われる
重要条件隣接ルータ間でK値が不一致だとネイバー不成立
暗記優先度詳細式より「何が効くか」と「不一致で隣接しない」を優先
確認コマンド見るポイント
show ip protocolsK値、AS番号、広告ネットワーク
show ip eigrp neighbors隣接成立状況

EIGRP メトリック計算

項目ルール
デフォルトK値K1=1, K3=1(他は0)
実質的な要素最小帯域幅 + 累積遅延
比較ルールメトリックが小さい経路を優先
デフォルト時の式(試験向け)内容
Metric = 256 * ((10^7 / 最小帯域幅[kbps]) + (遅延合計[10μs単位]))通常はこの形で考える
delay / 10 が出る理由説明
計算で使う遅延単位10マイクロ秒(10μs)単位
show interface の遅延値を使うときusec 値なら 10μs単位へ変換するため /10 が必要
経路全体の遅延各IF遅延を合計して使う
例(概念)計算
最小帯域幅 100000 kbps、遅延合計 2000 usec10^7/100000 = 1002000/10 = 200256*(100+200)=76800
確認コマンド見るポイント
show interfaces <IF>帯域幅(BW)と遅延(DLY)
show ip eigrp topologyFD/RDと計算後メトリック

重要: 詳細式の丸暗記より、「何が効くか(帯域幅・遅延)」と「遅延の単位変換(10μs)」を優先。

EIGRP の3つのテーブル

テーブル何が入るか確認コマンド
Neighbor Table隣接関係を確立したルータ一覧show ip eigrp neighbors
Topology Tableネイバーから受信した経路情報(Successor/FS候補)show ip eigrp topology
Routing Table実際に採用された最良経路(主にSuccessor)show ip route eigrp

重要: トポロジテーブルは「サクセサだけ」ではなく、フィージブルサクセサ候補も含めて保持する。

show ip eigrp topology の見方

見るポイント意味
P / AP=Passive(安定)、A=Active(再計算中)
FD is ...その宛先の Feasible Distance
via ... (...)(...)FD/RD(文献によって FD/AD 表記)
via <next-hop> の複数行受信した複数経路(Successor/FS候補)
最小FDの viaSuccessor(採用経路)
試験での判定正誤
show ip eigrp topology はトポロジテーブル表示
トポロジテーブルは隣接ルータ一覧だけを表示✗(それはネイバーテーブル)
show ip route はトポロジテーブル表示✗(ルーティングテーブル表示)

EIGRP 基本設定

構文(EIGRPの設定)

bash
(config)# router eigrp {AS番号}
(config-router)# network {ネットワークアドレス} [ワイルドカードマスク]
項目内容
AS番号の範囲1 - 65535
隣接条件経路交換するEIGRPルータ間でAS番号を一致させる必要がある
注意点EIGRPのAS番号は内部運用値であり、インターネット全体で一意である必要はない
設定目的コンフィグモードコマンド
EIGRPプロセス開始Global configrouter eigrp <asn>
参加ネットワーク指定Router confignetwork <ip> <wildcard>
Router ID明示Router configeigrp router-id <A.B.C.D>
受動IF設定Router configpassive-interface <IF>
自動要約無効化(必要時)Router configno auto-summary
確認コマンド見るポイント
show ip eigrp neighbors隣接関係(Hold/Up Time)
show ip eigrp topologySuccessor / Feasible Successor
show ip route eigrp採用経路(D / D EX
show ip protocolsEIGRP ASN, K値, 広告ネットワーク

混同しやすいルーティングプロトコル用語

用語何の番号か一致要件
EIGRP AS番号EIGRPプロセスの識別子隣接して経路交換する相手と一致必須
OSPF Process IDOSPFプロセスのローカル識別子相手と一致不要(ローカル値)
OSPF Area IDOSPFエリア識別子同一リンクで隣接する相手と一致必須
BGP AS番号AS (Autonomous System) 識別子eBGP隣接では相手ASを remote-as で正しく指定

重要: 「EIGRPのAS番号」と「OSPFのArea ID」はどちらも“番号”だが意味がまったく違う。

試験での最短チェック

チェック見るポイント
隣接が上がらないASN / K値 / 認証 / サブネット一致
経路が入らないnetwork 範囲、passive-interface、要約設定
すぐ切替しないFSが無い可能性(Queryが走る)

覚え方: 「EIGRPは DUAL、即切替は FS があるとき」。